NSXグッズコレクション
NSX GOODS COLLECTION
本木目パネル
2021/8/14更新
ヤフオクに、ごくまれに出品されるNSX純正オプションの本木目パネル。出品がある度にレポートしているのですが、その多くは、割れや欠けがある などコンディションが今ひとつのもので、入札意欲も今ひとつ高まらず、未だに入手できていないアイテムの一つです。
そんな中で、2021年7月25日に出品された商品は、なかなかの良品。 しかし、10万円を超えるとさすがに入札しづらくなり、早々に諦めてしまいました。元の価格を考えれば20万円以内なら十分にお買い得なので、大いに後悔しました。今回落札し損ねた商品ですが、掲載画像を見ると、商品の裏面がもろにプラスチックで、「カッティングシートを貼った社外品では?」と思って入札を控えた方もおられたはず。 しかし、天童木工製の実物も木の無垢材ではありません。
厚さ0.3ミリ(!)の本目をスライスしたものに和紙で裏打ちしたものを、職人さんがパネルのベースに貼っているのです。ベテランの方でも1台分仕上げるのに4、5日かかったそうです。 画像で、表面に貼ったものを折り込んだ部分が毛羽立って見えるところがあるので、これこそ裏打ち用の和紙ではないかと思います。というわけで、私はこの商品を「本物」と判定し入札したわけです。 今回の後悔ついでに、この本木目パネルについて、手元の資料をあたって調べてみることにしました(ネット上には意外にも本木目パネルに関する情報がほとんどありません)。
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NSXが1990年9月に発売された時には、この本木目パネルはオプションとして設定されていませんでした。初めて印刷物になって紹介されたのは「NSX Press VOL.6」(1992年1月号)で、その23〜26ページに紹介されています。文面では、「われらがNSXが送り出されて1年以上が経過した」とあるので、実際にこの記事が書かれたのは1991年末くらいで間違いないと思われます。
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この4ページ分を1枚の資料にしたものが手元にありました。ヤフオクで入手したものと思われますが入手時の記憶はありません。おそらく、「NSX Press VOL.6」の発行前後に、ディーラーで顧客への案内パンフレットとして配付されていたものではないかと思います。前述した「厚さ0.3ミリ〜」の話は、ここに登場します。
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本木目パネルは、上記の資料にある通り、「カスタムオーダープラン」STEP1の一つとして用意されたものです。「NSX Press VOL.8」(1992年秋号)では正式決定されてサービスがスタートしたことが分かります。ちなみに「NSX Press VOL.9」(1992年冬号)には「カスタムオーダープラン」は登場せず、「NSX Press VOL.10」(1993年春号)ではSTEP2(新ボディカラーなど)が紹介され、本木目パネルは登場しません。
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次に本木目パネルが登場するのは、「NSX Press VOL.11」(1993年夏号)です。フォトグラファーY氏の「カスタムオーダー体験記」が、続く「NSX Press VOL.12」(1993年秋号)との2回に渡って連載されています。この両方に本木目パネルの価格が120万円もすることが記されています。なお、VOL.12には工場で本木目パネルが装着されている様子を撮影した貴重な画像が掲載されています。この頃は、ちょうどリフレッシュプランが始まったばかりなので、タイトルがなじみのある「カスタムオーダー体験記」になっているようです。
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ここまで見てきたように、本木目パネルは1992年の秋からスタートした
オプションなのですが、なぜかカタログにはなかなか掲載されませんでした。1990年発行のKA009T、KB009T、KA010T(※これらはカタログの型番です)に掲載されていないのは当然として、1993年2月発行のKC302Tにも掲載されていません。1992年11月と1993年7月にはNSX-Rのカタログが発行されていますが(K211T、K407T)、NSX-Rにはカーボンパネル(これも天童木工製)しかオプション設定されていなかったため、ここにも本木目パネルは掲載されていません。アクセサリーカタログは、私が把握しているだけでNSXが絶版になるまでに15種発行されていますが、それらにも一切掲載されていません。 最初に本木目パネルがカタログに登場するのは1995年3月発行のK503Tです(下画像右側)。ただし、3種のパネルのうち、画像も商品名も「バーズアイ ・メイプル(楓)」しか紹介されていません。1996年3月発行のKB603T(下画像左側)では、「クス(楠)」「ウォールナット(胡桃)」を含めた詳細な情報が掲載されています。ただし、価格はどこにも記載されていません。ちなみにオプションは、その車が販売中であっても途中消滅することも多いのですが、この本木目パネルは2005年にNSXが絶版になるまで設定されていました(もちろん受注生産だったとは思いますが)。
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ここで、「ウォールナット」、「バーズアイ
・メイプル」、「クス」、という3種の素材について見てみましょう。まずは、一番の売れ筋だったとみられる「ウォールナット」(ヤフオクに登場していたのはほぼこれだったと思います)から。
ウォールナットはクルミ(胡桃)の木材としての呼び方です。すべての桜の実がサクランボとして食用にできないように、クルミとして食用に利用される種はクルミ属の一部に過ぎません。木材としては、アメリカ合衆国北部やカナダで育ったものが使用され、チーク(※1)やマホガニー(※2)と共に世界三大銘木の一つに数えられています。木質は重硬で衝撃に強く、強度と粘りを有し、狂いが少なく加工性や着色性も良いという特性を持ちます。落ち着いた色合いと重厚な木目から、高級家具や内装、楽器などに用いられてきました。耐衝撃性の強さを活かしてライフルの銃床にも使用されます。 |
ウォールナットに引き続き、バーズアイ
・メイプルについて説明させていただきます。
メイプルとはカエデ(楓)のことです。カエデは、ムクロジ科(旧カエデ科)カエデ属の落葉高木の総称で、モミジ(紅葉)とも呼ばれますが、本来モミジとは様々な樹木の紅葉の総称であり、モミジという植物は存在しません。 国産のものは楓材、西洋から輸入されたものはメイプル材と呼ばれて流通しています。北アメリカ産のメイプル材は、品種によってハードメイプルとソフトメイプルに区別されています。ハードメイプルは、サトウカエデのことです。ホットケーキやワッフルなどにかけるメイプルシロップは、サトウカエデの樹液を濃縮して作られた甘味料です。 ハードメイプルは、重硬で肌目は緻密で衝撃にも強いのが特徴です。ハードメープルの板目面に玉杢の小さな模様(鳥眼杢・ちょうがんもくめ)が出たものが、バーズアイ ・メープルと呼ばれます。建築材、家具、ボウリングのレーンやピン・自動車のダッシュボード・楽器・野球のバットに使用されています。 明るめのカラーが旧車の感覚だとスポーティなイメージにつながるようですが、スポーティな内装が好みのオーナーはカーボンパネルを選ぶと思われるので、年配の方以外にはあまり売れなかったのではないかと思います。
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最後にご紹介する素材はクスです。
クス(樟・楠)とは、クスノキ科ニッケイ属の常緑高木です。樟脳が採れる香木として知られ、飛鳥時代には仏像の材に使われました。古木になるほど年輪が入り組んで、材のひき方によって様々な模様の木目が現れます。虫害や腐敗に強いため、古来から船の材料として重宝されてきましたが、戦時中は用材生産統制規則により用途は樟脳製造に限られていました。現在では、内装、家具、彫刻用材などに使用され、重硬なものは橋梁材にも用いられています。
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先にご紹介したK503TとKB603Tの2冊のカタログの発行時期の間にあたる1995年7月に、カスタムオーダープランのポスタータイプ(A2サイズ)のパンフレットが発行されています。裏面はリフレッシュプランの案内となっています。 ここで注目すべきは価格です。新車用のカスタムオーダープランでは100万円、中古車用のリフレッシュプランでは120万円となっています。やはり旧パーツの取り外しや、経年劣化で変形したフレームへの現状あわせなどで、色々と手間が掛かる分、リフレッシュプランの方が高くなるのでしょう。NSX Press VOL.11〜12に掲載された「カスタムオーダー体験記」の記事では、実際には内容がカスタムオーダープランではなくリフレッシュプランでしたので120万円という価格になっていました。ちなみに、カーボンパネルもカスタムオーダープランでは80万円、リフレッシュプランでは96万円という差が付けられています。
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ホンダ社内限定の「New Sports Magazine X」という冊子が何冊か発行されているのですが、1997年5月号に当時最新のカスタムオーダープランの設定(案)が掲載されています。2005年のNSXの絶版まで続いた本木目パネルは当然掲載されているわけですが、対象はクーペとタイプTのみで、1997年2月に発売されたばかりのタイプSにはNSX-R同様に設定されていないことが分かります。
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A2ポスターサイズのカスタムオーダープラン&リフレッシュプランのパンフレットが1995年7月に発行されたのは先述の通りですが、1997年4月にA4サイズのパンフレットが発行されています。同じく先述の「New Sports Magazine X」1997年5月号に掲載されていた案通りになっています。価格も1995年時のまま、カスタムオーダープランでは100万円、リフレッシュプランでは120万円となっています。
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カスタムオーダープラン&リフレッシュプランのパンフレットは、1999年9月にマイナーチェンジします。ここでも価格は据え置きで、カスタムオーダープランでは100万円、リフレッシュプランでは120万円となっています。このパンフレットの1997年版との主な変更点は、パンチングレザー仕様とHIDヘッドライト、ツイントレッドタイヤがなくなった点でしょうか。前者2点は標準装備になり、タイヤについては実際に廃止されたことによる削除と思われます。
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ここまで本木目パネルの歴史を追ってきましたが、いかがだったでしょうか。以前当サイトで、本木目パネルが100万円から120万円に値上がりしたというようなことを書いたような記憶があるのですが、カスタムオーダープランとリフレッシュプランの価格の違いを勘違いしただけのようです。 他にもホンダ発行の冊子やムック本を調べれば新しい情報があるかもしれませんが、このへんにしておきます。何か興味深い情報をお持ちの方はご連絡ください。最後に、本木目パネルを含めたカスタムオーダープランが掲載された2001年版のディーラーの価格表を掲載させていただきます(本木目パネル自体の価格は掲載されていませんが)。
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※2021年8月3日から14日にかけてトップページに短期連載したものをまとめたものです。
※2020年7月25日にウッドパネル関連記事掲載あり。
※2017年7月7日にカーボンパネル関連記事掲載あり。
※2017年5月11日にウッドパネル関連記事掲載あり。